イマドキの英語ではHeもSheも古い?単数形のTheyが登場


今週のニューヨークタイムズ紙でこのようなコラムが掲載されていました。タイトルは、「私のことを'They'(彼ら)と呼んで下さい」。

さらにこのコラムニストは次のように書いています:

単数形の"They"は、全員を差別なく包含し、柔軟だし、ジェンダー(性差)を意識することに囚われた息苦しい状態から解放してくれる。

このコラムニストは、自分のことを「郊外に住むストレートの父親」と紹介しています。

「私は、あなたが典型的に考えるような、中年で異性愛者の郊外に住む父親です。日曜大工をかじっていて、生ゴミを出すことが日課で、ご近所さんが運転するポルシェを羨ましいなと思っています。男性もメークをするべきと思っています(だって見た目がナイスだし!)、だけど私の洗練されていない男性性はオンライン上でも現実でも十分男性的なので、ほとんどの人が私のことを言及するのに"he"(彼)や"him"(彼を)を使います。それはそれで構わないですし、もし誰かが、こうした伝統的、だけど無駄な男性形の人称代名詞を使って私のことを指すことに気分を悪くするということはありません。 
だけど、私のことを"he"(彼)と呼ぶべきではありません。もし私たちが、公平で理性的な誰をも排除しない世界に住んでいたならば・・・(中略)共通語で私のことを言及するのに、あなたは私のジェンダーを推定する必要はないでしょう」。

私が英語を勉強していた時、高校の授業で先生が「その人の性別がどちらかわからない時は、"He or she"(彼または彼女)やOne、Someoneといった言い方をする」と教えてもらったのを思い出します。

当時、アメリカでフェミニズムがブームになっていたこともあり、性別がわからない人のことを指すのに、とりあえず男性だと想定するのではなく、ちゃんと"He or she"と男女平等に扱うのがアメリカでは標準的になりつつあると教えてもらいました。(旧来は、その人が男性か女性かわからない場合、Heを使い、仮に男性だと想定して文章を書いていました。)

アメリカで生活するようになってからも、よくHe/sheとか、中にはS/he(SheとHeを混ぜ合わせた表記)も見かけます。少し意識が高い人は、She/heと、Sheを先に書いたりします。

大学への願書やビジネスレターでも、

「前略、担当者様、」と書く場合、

"Dear Sir or Madam:"

と、ちゃんと担当者が男性でも女性でもいいよう両者を想定して書き出すのがマナーです。(Sirは男性を指す敬称、Madamは女性を指す敬称。)

ですが、このニューヨークタイムズ紙のコラムニストは、男女併記も古いと言っているようです。フェミニズムの活動もここまできたかという感じでしょうか。複数形のThey(男女関係なく複数の「彼ら」)を使って、単数形のHeもSheも含んで使いましょうという意見です。

これは、このニューヨークタイムズのコラムニストが初めて言い始めた訳ではありません。ここ数年、「単数形のThey」というのをチラホラ耳にするようになってきています。時には、テレビのニュース番組でも見かけます。

日本の学校では、今でも

アイ・マイ・ミー
ユー・ユア・ユー
シー・ハー・ハー
ヒー・ヒズ・ヒム
ゼイ・ゼア・ゼム
I  -  my - me
You - your - you
She - her - her
He - his - him
They - their - them


と呪文のように教えていると思います。しかし、アメリカの一部ラディカルな人たちは、HeもSheも使うのをやめて、Theyで全て代用しましょうと、実際に「単数形のThey」を使い始めているのです。これを初めて目にした時はとても驚きました。

私は、ここまで目くじらを立てて性差を敵視する必要はないという意見です。HeもSheも使わなくなったとしても、現実の性差がなくなる訳ではありません。性差を気にせず誰かについて言及したい時は、「that person(その人)」というような言い方がある訳ですし、わざわざ複数形のTheyを持ってきて一人なのか複数人なのか混乱させなくても良いと思うのですが、皆さんの意見はどうでしょうか?




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