北朝鮮から解放され死亡した米大学生に対して「自業自得」と発言した米大学教授が解雇される
日本では現職の女性国会議員が秘書に対して「このハゲー!」と怒鳴り暴行するという問題行動で離党を余儀なくさたニュースが話題だが、アメリカでも問題発言で職を失った女性がいる。デラウェア大学で人類学を教える女性教授が、北朝鮮から解放された後米国で死亡した男子大学生オットー・ワームビアさんについて、彼が亡くなったのは「自業自得だ」と6月20日に自身のフェースブックに投稿したのだ(現在その投稿は削除されている)。
日本ではこのように報道する記事がある:
デットワイラー教授を擁護する人たちからは、アメリカ国内では通用する「白人の特権階級意識」が、北朝鮮では通用しなかったという意見がある。オットーさんが昏睡状態でアメリカに帰国してからも、ソーシャルメディアでは、「これはアメリカで最も愚かな男子大学生かもしれない(“This Might Be America’s Biggest Idiot Frat Boy”)」という投稿すらある。こうした批判は彼が亡くなった後も続いた。
しかし、彼が亡くなった翌日にデットワイラー教授がこのメッセージを投稿したこともあり、非常識なコメントだと言う意見が多く目につく。
理由はどうであれ、その「抑圧的な政府」である北朝鮮によって逮捕され、22歳という若さで亡くなった学生に対する言葉としては厳しすぎる。
日本ではこのように報道する記事がある:
「米大学生死亡に米教授「北で死ぬだけのことをした」と発言し波紋」英語の記事ではさらに詳しい状況を報じている:
(略). . . 25日(現地時間)、現地メディアによると、Kathy Dettwylerデラウェア大学人類学教授は去る20日、SNSを通して「私の講義を聞きにくる、裕福で考えのない若い白人男性たちの典型」と批判する文章を掲載。この文章が掲載された日がオットー・ワームビア氏が死去した翌日だったため、物議はより大きくなった。. . . (略)
- キャシー・デットワイラー(Kathy Dettwyler)教授は62歳。人類学の教授と紹介されているが、正式にはパートタイムの客員教授(adjunct professor)であるため、テニュア(終身地位保証)がある教授ではない。そのため、この問題発言の直後、デラウェア大学からはこの教授を来学期(今年の秋学期)以降、再雇用しないという発表が行われている。
- そもそもパートタイム職のため、キャシー・デットワイラー教授がこのコメントをフェースブックに投稿した時、デラウェア大学の教員ではなかった。
- オットー・ワームビアさん(当時22歳)はバージニア大学の学生。デラウェア大学で教えるキャシー・デットワイラー教授とは直接の面識はない。
デットワイラー教授の投稿は削除されているが、全文がここで紹介されている。以下はこの全文を日本語訳したもの:
「オットー・ワームビアはまさしく自業自得の仕打ちを受けたと私は考えるのだけれど間違っているでしょうか?彼は無謀にも北朝鮮に行き、自分の行動がもたらすことの重大性など今まで一度も受け止めたことがない、甘やかされ、世間知らずで、傲慢なアメリカ人大学生のままに行動しました。私は彼が判決を言い渡される時に泣いているのを見ましたが、「何が起きるか予想できなかったのか?」と思いました。
抑圧的な北朝鮮政府のもとで苦しんでいる北朝鮮の人たちについて、考えを巡らせてみる瞬間というものが一度もなかったのでしょうか?彼らが北朝鮮人だから、アメリカ人ではないからという理由だけで、私たちは彼らについて心配するべきではないというのでしょうか?
私はまさにオットーのような人たちを教育するために人生を費やしてきました(私は62歳の人類学を教える大学教授です)。オットーは、私のクラスを受講する多くの男子学生(彼らは幼稚で世間知らずで裕福な白人男性)と同じ典型的な物の見方の持ち主です。彼らは、良い成績を取るためには本当に教科書を読んで授業内容を勉強する必要があるとは思っていないため、(悪い成績がつくと)自分の成績について泣き言を言う、全く同じ種類の子供たちです。泣く代わりに、彼らの女性教授たちを怒鳴り散らして脅すようなこともする人たちです。
彼らの何をしても許されるという考え方について、究極的には彼らの両親が責められるべきでしょう。アメリカでなら、幼稚で世間知らずで裕福な白人男性は、女性に性的暴行を加えてもいつものように罪から逃れられるかもしれない。しかし北朝鮮ではそうはいかない。そしてもちろん、残された人生でその代償を払わされることになるのはオットーの両親です」
驚いたことに、デットワイラー教授はこのコメントを投稿した後も、雑誌National Reviewのコメントで、「(私が教える男子学生の中には)学生パーティーで泥酔した女性に性的暴行を加えることや、コカインを吸引すること、テストでカンニングをすること、そして教授に対して暴力で脅すことをなんとも思わない学生たちがいる」と繰り返している。白人の男子学生から、個人的に暴力を受けたトラウマがあるかのような言い方だ。
デットワイラー教授を擁護する人たちからは、アメリカ国内では通用する「白人の特権階級意識」が、北朝鮮では通用しなかったという意見がある。オットーさんが昏睡状態でアメリカに帰国してからも、ソーシャルメディアでは、「これはアメリカで最も愚かな男子大学生かもしれない(“This Might Be America’s Biggest Idiot Frat Boy”)」という投稿すらある。こうした批判は彼が亡くなった後も続いた。
しかし、彼が亡くなった翌日にデットワイラー教授がこのメッセージを投稿したこともあり、非常識なコメントだと言う意見が多く目につく。
理由はどうであれ、その「抑圧的な政府」である北朝鮮によって逮捕され、22歳という若さで亡くなった学生に対する言葉としては厳しすぎる。
特にデットワイラー教授の投稿の最初の一文、「オットー・ワームビアはまさしく自業自得の仕打ちを受けた("Otto Warmbier got exactly what he deserved")」というのは思いやりのかけらも感じられない表現だ。この一文が多くのアメリカ人の反感を買ったと言ってもいいだろう。
"deserve"という動詞は、通常「〜を受けるに値する」「〜の価値がある」「〜にふさわしい」という肯定的な意味だ。しかし、相手を痛烈に批判する場合、わざと矛盾する「オクシモロン表現」を使い、皮肉を込めてYou deserve it(それにふさわしいね)と言う。(オクシモロンについてはこの投稿で詳しく説明している。)
デットワイラー教授を非難する人たちは、デラウェア大学から解雇通告を受けたデットワイラー教授に対して、まさに皮肉を込めて"You deserve it"(解雇されるにふさわしい)とコメントしている。
"deserve"という動詞は、通常「〜を受けるに値する」「〜の価値がある」「〜にふさわしい」という肯定的な意味だ。しかし、相手を痛烈に批判する場合、わざと矛盾する「オクシモロン表現」を使い、皮肉を込めてYou deserve it(それにふさわしいね)と言う。(オクシモロンについてはこの投稿で詳しく説明している。)
デットワイラー教授を非難する人たちは、デラウェア大学から解雇通告を受けたデットワイラー教授に対して、まさに皮肉を込めて"You deserve it"(解雇されるにふさわしい)とコメントしている。
Photo courtesy: Amazon.com (https://www.amazon.com/Katherine-A.-Dettwyler/e/B001IYV8RG)
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