日本語が語源の英単語:「モグサ」と「お灸」

俳優の武田真治さんが、テレビ番組『世界まる見え! テレビ特捜部』の中で、海外の空港の税関で呼び止められ荷物検査を受けたときのことを話していた。

武田真治、空港税関で止められた過去 所持していた「枯れ草」はまさかの

VTR鑑賞後、武田が「1回だけ、荷物を出されて検査されたことがある」と空港税関でのエピソードを披露する。海外でサックスのレコーディングに行った武田。バッグから枯れ草が出てきて、マリファナなどと疑われたのだが、それは痛めがちな手首に使う「お灸」だった。「そりゃ怪しいだろうな」と思いながらも、お灸を説明することが難しかった武田は実際にその場でお灸を実演。「気持ちいい」という表情とリアクションで納得してもらったと明かした。
しかし、ジェスチャーなどしなくても、日本語で "This is モグサ" と言えば空港職員に伝わったかもしれない。 実は、モグサは英語でも"moxa"(モクサ)と言うのだ。しかも語源は日本語。

「英語でなんと言うかわからない」などと思っていたら、実は日本語がそのまま英単語になっていたなんて、チコちゃんに「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」と怒鳴られそうだ。

モグサを使う「お灸」のことは、「moxa(モグサ)」と「(com)bustion(燃焼)」を合わせて、「"moxibustion"(モキシバスチョン)」と言う。モグサが英語でもmoxaだと知っていれば、これもすぐに覚えられる英単語だ。

そう言う筆者も、英語のmoxibustion(お灸)の語源が日本語のモグサだと知ったのはつい最近のこと。たまに「お灸って英語でなんと言うんだっけ?なんちゃらバスチョンだったよなぁ」と記憶が出てこないことも。燃焼を意味するcombustionはすぐに記憶に残ったのに、モグサが語源だと知らなかったために、冒頭の「moxi-」が出てこなかった。しかも、moxiから日本語のモグサを連想するのはなかなか難しい。

日本語を少し話すアメリカ人の友人に、moxibustionの語源は日本語だと伝えると、「へぇ〜知らなかった」との返事。アメリカ人も語源を知らずに使っている人が多いようだ。

モグサの原料であるオオヨモギのことは、英語でmugwortと言うので、乾燥させたモグサのこともmoxaではなくmugwortと言う人がいるかもしれない。

* * *

そもそも、モグサを西洋に初めて紹介したのは、オランダ人のヘルマン・ブショフ(Hermann Buschoff)と言われている。1674年、当時のバタビア(今のインドネシア)に赴任していたブショフが、モグサ(お灸)を使った治療法について初となる書籍を記したと言われている。

日本語が語源の英単語は、意外と多い。特に最近、アメリカでよく目にするのは、shiitake(椎茸)、jidori(地鶏)、tonkotsu(豚骨)などの食品関係。日本食人気の波に乗って、日本語の単語がそのまま英語でも広く使われるようになってきている。その他にも、医者の知人から、takotsubo(タコツボ)と言う日本語の単語が心臓外科手術の用語として使われていると教えてもらった。おそらく、日本人医師が開発し広めたのだろう。その他にも、トヨタの自動車工場で生まれた「kaizen(改善)」も英語で使われているのは有名だろう。

日本語に取り入れられた英単語は非常に多いことは言わずもがなだが、逆に英語に取り入れられた日本語のことは意外と知られていない。まさにお灸(moxibustion)の語源が日本語と知ってお灸を据えられた気分だ。


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