使うときに気をつけたい単語:"Foreigners"(外国人)
日本では「働き方改革」で残業ができなくなり、副業を始めるサラリーマンが増えているらしい。先日も、空いた時間にスカイプを利用して日本語を外国人に教えるビジネスマンがテレビ・ニュースで紹介されていた。そのインタビュー番組で紹介されていたサイトをのぞいてみたところ、日本国内よりも、むしろ海外在住の日本人が、日本語の先生として登録している方が多い印象を受けた。
そんな先生たちのプロフィールを見てみると、自分の顔写真に加えて、簡単な自己紹介文と自己紹介動画を掲載している。中には、オンライン・デート・サイトかと見間違うような魅惑的な写真を掲載している先生もいれば、フェースブックからそのまま持ってきたようなカジュアルなスナップ・ショットを掲載している人もいる。経歴も、実際に高校教師をしていたというプロの先生もいれば、まだ大学生でアメリカに留学中というバイト感覚の人もいて幅広い。
自己紹介文をさらに見てみると、日本語初心者にとってわかりやすいように、全てひらがなで書いている人がいれば、自分の経歴、趣味、日本語教師としての実績などを英語で外国人にとってわかりやすく紹介している人もいる。こういうところにも個性が現れていて面白い。
これだけ年齢層も経歴も違う先生が登録しているとあっては、日本語を勉強している学生にとって、どの先生を選んでいいか非常に迷うところだろう。友達感覚(場合によっては恋人感覚?)になれる若い先生を選ぶか、社会人経験豊かな(だけど少し近寄りがたい)先生を選ぶか、迷うところだ。
一方、日本語の先生たちが、生徒に選んでもらうためにどのように自分をアピールしているか興味津々に眺めていたところ、やはり気になったのは英語による自己紹介のところ。もちろん、日本語がネイティブの先生たちなので、英語はノン・ネイティブな人が多い(少なくとも完璧な日本語と英語のバイリンガルらしき先生は1、2人しか見かけなかった)。ただ、それにしてもひどい英語が結構な頻度で目に付く。思わず赤ペンをとって手を入れたくなったくらいだ。
特に気になったのが、「外国人に日本語を教えた事があります」というセールスポイントを言う部分。何年くらい日本語を外国人に教えた事があるかという情報は、自分がどれくらい経験を積んだ日本語教師かという事をアピールするのに重要だ。そのため、このポイントを英語でアピールしている先生が多い。しかし、ほとんどの日本語教師が、
"I have taught Japanese to foreigners."
とか
"I used to teach Japanese to my foreign friends"
というような表現をしている人がほとんどで、読んでいてギョッとしてしまった。(しかも、I taught Japanese to foreigners for ten years.というように初歩的な時制のミスも多く目立った。)
この自己紹介文の何がいけないのかというと、"foreigners"(外国人)という単語には、日本語で言うところの「ガイジン」に似た侮蔑的な響があることに気が付いていない点だ。おそらく、学校で「外国人=foreigners」と習ったため、そのまま「外国人に日本語を教えた経験があります」というのをI have taught Japanese to foreignersと直訳してしまっているのだろう。
日本語の先生たちの自己紹介文に、やたらと"foreigners"(ガイジン)という単語が踊っているのを見てヒヤヒヤしてしまった。日本語教師はなんと差別的なのかと、誤解を受けてしまうのではないかと心配してしまう。
とりあえず、英語に自信がない人は、”foreigners”という単語は使うのを禁止したほうが無難だ。foreignersの代わりになる安全な言い方に、"international peopel"や"non-Japanese speakers"というのがある。
これを使えば、「外国人に日本語を教えた事がります」と言いたい場合、
"I have taught Japanese to international students."
となり、角の立たないスムーズな言い方になる。もしオーストラリアで日本語教師をしていたのであれば、そのまま"I was teaching Japanese to Australian students"というように、生徒の国籍をそのまま書いてしまったほうが「外国人」と書くより何倍も良いし英語の話者にとってナチュラルな言い方だ。
実際、英語圏で生活していると"foreigners"という単語を見かけることは意外と少ないかもしれない。例えば、アメリカの空港で入国審査を受ける場合、「米国市民および永住権保持者」と「外国人」で入国審査に並ぶ列が別々であることはご存知の通りだ。英語による説明は、それぞれ
"U.S. Citizen/Permanent Resident"(米国市民/永住者)と、
"Non-U.S. Citizen"(非米国市民)または"All Others"(その他全て)
と表示されているはずだ。Foreigners(外国人)ではなく、Non-U.S. Citizen(非米国市民)やAll Others(その他全て)と表示されている。
EU圏内のヨーロッパの空港でも、
EU Passports(EUパスポート)と、
Non-EU Passports(非EUパスポート)もしくは"All Other Passports"(その他全てのパスポート)
と表示されている。
空港の入国審査場で、"Foreigners"(外国人)という表示はあまり見た記憶がない。それくらい、"Foreigners"という単語は使うのに慎重になるべきセンシティブなニュアンスを持った単語なのだ。ちなみに、「不法滞在外国人」は英語で言うと"illegal aliens"で、ここでも"foreigners"という単語は使わない。
日本語の英語教育では逐語訳が多く、「foreigners = 外国人」と安直に教えてしまう傾向にあるため、英語のニュアンスを全く無視したギョッとする英語の文章を無意識に書いてしまう日本人が量産されてしまっているのだろう。
皮肉にも日本語教師たちが書いた英語による自己紹介文を眺めてみて、日本における英語教育の問題点が垣間見えたのだった。
そんな先生たちのプロフィールを見てみると、自分の顔写真に加えて、簡単な自己紹介文と自己紹介動画を掲載している。中には、オンライン・デート・サイトかと見間違うような魅惑的な写真を掲載している先生もいれば、フェースブックからそのまま持ってきたようなカジュアルなスナップ・ショットを掲載している人もいる。経歴も、実際に高校教師をしていたというプロの先生もいれば、まだ大学生でアメリカに留学中というバイト感覚の人もいて幅広い。
自己紹介文をさらに見てみると、日本語初心者にとってわかりやすいように、全てひらがなで書いている人がいれば、自分の経歴、趣味、日本語教師としての実績などを英語で外国人にとってわかりやすく紹介している人もいる。こういうところにも個性が現れていて面白い。
これだけ年齢層も経歴も違う先生が登録しているとあっては、日本語を勉強している学生にとって、どの先生を選んでいいか非常に迷うところだろう。友達感覚(場合によっては恋人感覚?)になれる若い先生を選ぶか、社会人経験豊かな(だけど少し近寄りがたい)先生を選ぶか、迷うところだ。
一方、日本語の先生たちが、生徒に選んでもらうためにどのように自分をアピールしているか興味津々に眺めていたところ、やはり気になったのは英語による自己紹介のところ。もちろん、日本語がネイティブの先生たちなので、英語はノン・ネイティブな人が多い(少なくとも完璧な日本語と英語のバイリンガルらしき先生は1、2人しか見かけなかった)。ただ、それにしてもひどい英語が結構な頻度で目に付く。思わず赤ペンをとって手を入れたくなったくらいだ。
特に気になったのが、「外国人に日本語を教えた事があります」というセールスポイントを言う部分。何年くらい日本語を外国人に教えた事があるかという情報は、自分がどれくらい経験を積んだ日本語教師かという事をアピールするのに重要だ。そのため、このポイントを英語でアピールしている先生が多い。しかし、ほとんどの日本語教師が、
"I have taught Japanese to foreigners."
とか
"I used to teach Japanese to my foreign friends"
というような表現をしている人がほとんどで、読んでいてギョッとしてしまった。(しかも、I taught Japanese to foreigners for ten years.というように初歩的な時制のミスも多く目立った。)
この自己紹介文の何がいけないのかというと、"foreigners"(外国人)という単語には、日本語で言うところの「ガイジン」に似た侮蔑的な響があることに気が付いていない点だ。おそらく、学校で「外国人=foreigners」と習ったため、そのまま「外国人に日本語を教えた経験があります」というのをI have taught Japanese to foreignersと直訳してしまっているのだろう。
日本語の先生たちの自己紹介文に、やたらと"foreigners"(ガイジン)という単語が踊っているのを見てヒヤヒヤしてしまった。日本語教師はなんと差別的なのかと、誤解を受けてしまうのではないかと心配してしまう。
とりあえず、英語に自信がない人は、”foreigners”という単語は使うのを禁止したほうが無難だ。foreignersの代わりになる安全な言い方に、"international peopel"や"non-Japanese speakers"というのがある。
これを使えば、「外国人に日本語を教えた事がります」と言いたい場合、
"I have taught Japanese to international students."
となり、角の立たないスムーズな言い方になる。もしオーストラリアで日本語教師をしていたのであれば、そのまま"I was teaching Japanese to Australian students"というように、生徒の国籍をそのまま書いてしまったほうが「外国人」と書くより何倍も良いし英語の話者にとってナチュラルな言い方だ。
実際、英語圏で生活していると"foreigners"という単語を見かけることは意外と少ないかもしれない。例えば、アメリカの空港で入国審査を受ける場合、「米国市民および永住権保持者」と「外国人」で入国審査に並ぶ列が別々であることはご存知の通りだ。英語による説明は、それぞれ
"U.S. Citizen/Permanent Resident"(米国市民/永住者)と、
"Non-U.S. Citizen"(非米国市民)または"All Others"(その他全て)
と表示されているはずだ。Foreigners(外国人)ではなく、Non-U.S. Citizen(非米国市民)やAll Others(その他全て)と表示されている。
EU圏内のヨーロッパの空港でも、
EU Passports(EUパスポート)と、
Non-EU Passports(非EUパスポート)もしくは"All Other Passports"(その他全てのパスポート)
と表示されている。
空港の入国審査場で、"Foreigners"(外国人)という表示はあまり見た記憶がない。それくらい、"Foreigners"という単語は使うのに慎重になるべきセンシティブなニュアンスを持った単語なのだ。ちなみに、「不法滞在外国人」は英語で言うと"illegal aliens"で、ここでも"foreigners"という単語は使わない。
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日本語の英語教育では逐語訳が多く、「foreigners = 外国人」と安直に教えてしまう傾向にあるため、英語のニュアンスを全く無視したギョッとする英語の文章を無意識に書いてしまう日本人が量産されてしまっているのだろう。
皮肉にも日本語教師たちが書いた英語による自己紹介文を眺めてみて、日本における英語教育の問題点が垣間見えたのだった。
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