度胸試しを意味する「チキンレース」は和製英語

北朝鮮がICBMの発射実験をして、アメリカと北朝鮮の間の「度胸試し」が深刻化している。このことを日本のメディアでは「チキンレース」と呼んでいるのをよく目にする。しかしこれは英語ではない。日本語でしか通用しない表現だ。

元政治家や現役政治家もこのように頻繁に「チキンレース」を使っている。

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ここまで広く浸透して使われてくれば「チキンレース」は日本語の一部になっている立派な単語と言えるだろう。しかし、もし英語でも"chicken race"が同じ意味で使われていると考えるのであればそれは大きな間違いだ。北朝鮮とアメリカの緊張関係を英語で説明しようとして、"That's the chicken race"と言っても通じない。

英語で「チキンレース」のことは、"chichekn game"または"the game of chicken"と言うのが一般的。"the hawk-dove game"や"snowdrift"と言う呼び方もあるようだが実際に使われているのを聞いたことはない。

あるサイトには、「ジェームス・ディーンの映画『理由なき反抗』に描かれているものが有名で、どこまで、ぎりぎり物事を我慢できるかによって度胸の良さを競い合う行為を指す」とある。

おそらくこうした映画から、崖ギリギリまで車を走らせるような度胸試しのことを日本では「チキンレース」と呼ぶようになったのだろうが、当時の翻訳者がわざと「チキンレース」と意訳したのか、それともどこからともなく日本人がそう呼ぶようになったのかは不明だ。

英語を話す人たちの間で、"chicken race"が英語本来の"chicken game"の意味として伝わらないもう一つの理由には、"headless chicken race"という別の表現があるからかもしれない。

文字通り訳すと「頭のないチキンのレース」だが、集団が(時間や上司の)プレッシャーから右往左往して作業を進めようとするが、結果が出ずに時間だけが無駄に過ぎて慌てふためく様子のことを指す。

そのため、"chichken race"と言うと、「度胸試し」よりも「右往左往している様子」を連想するアメリカ人の方が多いかもしれない。日本人が「チキンレース」と聞いて頭に思い浮かべる様子とは全く違うのだ。

「チキンレース」はすでに日本語として市民権を得てしまっているので、英語ではそうは言わないからといって使うのをやめる必要はないと思う。和製英語として理解して使えばいい。ただし、英語では"chicken game"と言うことを忘れずに。

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