英語は3語で伝わる!の本質: 英語は「動詞」、日本語は「名詞」重視の言語ということ
「パイナップルだけ」、「3語だけ」と極端に簡素化して「簡単にできる」ことを売りにしたブームというのは、火はつきやすいかもしれませんが、ほとんどの人が挫折して次のブームに移るという繰り返しではないでしょうか。結局、簡素化された方法論は「万能薬(panacea)」にはなり得ません。ダイエットと同じで、英会話も「自分にあった方法」と「継続(強い目的意識)」が一番大切なんですけどね。
さて、辛辣な批評から入ってしまいましたが、「英語は3語で通じる」の内容を見て意外と的を射ているなと思いました。あたかも3語で全てが通じるというのはさすがに誇張ですが、日本語とは違う英語という言語の本質を突いた点は評価に値すると思います。
その本質というのは、日本語が「名詞」重視の言語なのに対して、英語が「動詞」重視だということです。
中山裕木子さんが、その著書「会話もメールも 英語は3語で伝わります」の表紙でも紹介している例文を見てみましょう。
× My job is an English teacher.
○ I teach English.
「私は英語の教師です」と言いたい場合、日本語で考えると「教師(teacher)」や「仕事(job)」という名詞を使いたくなります。しかし、英語では「自分は何をしているか」、つまり動詞を使ってアクション(動作)として仕事内容を説明しようとする方が簡潔でナチュラルに聞こえます。
(ちなみに、"My job is an English teacher."というのは辛うじて意味は通じますが英語としてはひどい文章で、ネイティブにとって強い違和感があります。"My job"や"an English teacher"というフレーズを使って言いたい場合は、My job is teaching English."や"My job is to teach English."というのが自然です。もしくは、"I'm an English teacher."と言います。)
英語が動詞を重視するもっと具体的な例として、履歴書の書き方があります。アメリカで指導される英文履歴書の書き方でも、職歴を説明するときは「アクション動詞(action verb)を使って書くように」とよくアドバイスされます。
大学が履歴書に使えるアクション動詞のリストを学生のために案内していたり、履歴書を素晴らしくするためのパワフルな動詞185個というような記事もあります。(グーグルで"action verbs for resume"と検索すると、84万5000件の結果がヒットします。)
日本語で簡潔に職歴を書こうとすると、このように体言止めにすることが多いと思います:
- 財務諸表を分析
- チーム・リーダーとしてグループを統括
- 毎週の進捗レポートを執筆
一方、これらを英文履歴書にすると各項目をアクション動詞で書き始めます:
- Analyzed B/S
- Led a team
- Wrote weekly progress reports
また「3語で」伝えようとすると、なるべく簡潔に英語の文章を構成しようと心がけることにもつながります。これも英語を上達させるためにとても必要なことです。英語はなるべく短く言いたい内容を伝えようとする言語だからです。
* * *
このように書くと、SVO(主語+動詞+目的語)構文を基本とした「3語の英語」というのが万能かのように聞こえてしまうかもしれませんが、ここには落とし穴もあります。
筆者の中山さんの勧めるSVO構文だと、どうしても主語が『I(私)』となってしまうことが多くなり、ビジネス・メールなどでは幼稚になってしまうことです。会話でも、『I(私)』ばかりが主語の文章が続くと、自分にしか興味がない人("a me, me, me person")とネガティブな印象を与えかねません。
「英語は3語で通じる」メソッドは、英語が苦手な人にとって英会話の「とっかかり」としては良いと思います。ですが、小学校の低学年が話すような英語レベルを脱して、大人が話すような英語が使えるようになりたいのであれば、「3語で通じる」メソッドはさっさと卒業して次のレベルへ進むことが必須です。
【追記】
アメリカ人に「日本では『英語は3語で伝わる』というのが流行ってるよ」と伝えると、
「それは"I don't know"の3語ってこと?」という絶妙な返事。
アメリカ人に「英語は3語で伝わる」と話すと、それはこんなジョークにしか受け取ってもらえないんですね。
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