UCバークレー校が誤った報告をしたため、2019年のU.S. Newsベスト大学ランキングから除外される

アメリカへの留学を計画している人であれば、全米大学ランキングを一度は見たことがあるでしょう。アメリカの大学ランキングは色々な出版社や機関から出されていますが、有名なランキングの一つとしてU.S. News社が毎年発表しているBest Colleges Rankingが挙げられます。

2019年のランキングで、毎年トップ10位に食い込んでいるカリフォルニア大学バークレー校がランキングから除外されたことがニュースになっています。フォーブス紙によると、ランクから除外される前は、カリフォルニア大学バークレー校は全米で2位の評価を受けていました。

U.S. News社によると、評価の一つの指標である「卒業生による寄付率」について、大学が誤った報告をしていたため現在のランクから除外したそうです。

2016年と2017年の会計年度で、卒業生の11.6%が大学に寄付をしたと報告していましたが、実際2016年度の寄付率は7.9%だったそうです。

大学側もこの間違いを認めており、2014年度にまで遡って、そこからずっと間違った数字を報告していたそう。

間違った数字を報告した理由は、実際に寄付した卒業生の率ではなく、「寄付すると約束した」卒業生も含んだ数値を報告していたから。大学側が意図的に数値を水増ししていたかどうかについては明らかにしていません。あくまで「エラー」と報道されています。

U.S. News社のランキング評価では、現金による寄付をした卒業生だけをカウントすることになっているにも関わらず、バークレー校は「寄付すると約束した」卒業生や、税金控除となる寄付金も含んでいたため「ルール違反」とみなされたそうです。卒業生の寄付率は、ランキング・スコアの5%を占める評価項目となっています。

この「エラー」により、今年9月に発表される2020年の最新版大学ランキングが公開されるまで、カリフォルニア大学バークレー校はランク外の措置が取られています。

現時点の全米大学ランキング(トップ25位):

1. プリンストン大学
2. ハーバード大学
3. コロンビア大学
3. MIT
3. シカゴ大学
3. イェール大学
7. スタンフォード大学
8. デューク大学
8. ペンシルバニア大学
10. ジョンズホプキンス大学
10. ノースウェスターン大学
12. カリフォルニア工科大学
12. ダートマス大学
14. ブラウン大学
14. ヴァンダービルト大学
16. コーネル大学
16. ライス大学
18. ノートルダム大学
19. UCLA
19. ワシントン大学 in St. Louis
21. エモリー大学
22. ジョージタウン大学
22. 南カリフォルニア大学
25. カーネギーメロン大学
25. バージニア大学

(出典:U.S. News)


今年9月に発表される2020年版の大学ランキングに掲載されるためには、カリフォルニア大学バークレー校は8月5日までに提出したデータが正しいことを保証するよう、U.S. News社は要請しています。

また、この先3年間に渡って、カリフォルニア大学バークレー校の総長(Chancellor)と学長(President)は、U.S. News社へ提出されるデータが正しいことを保証することが義務付けられることになっています。


* * *


筆者がアメリカの大学院に通っていた時も、学長がスピーチの中で大学ランキングに言及したり、卒業後も、大学から送られてくる寄付金を募るメールの中で、今年は何位にランキングされたかがよく言及されています。大学側が、非常にランキングに一喜一憂していることが伺えます。

日本の大学にも出版社などが発表するランキングがありますが、学長がそのランキングに一喜一憂することはあまりないように思います(国際的な大学のランキングは気にするようになっているようですが)。

少なくとも日本国内の大学ランキングについては、日本は偏差値信仰が浸透しているので、出版社によるランキングより偏差値によるランキングが重視されていると言えるでしょうか。逆に、アメリカには大学・学部の偏差値がないため、第3者機関によるランキングに一喜一憂していると言えるかもしれません。

しかし、スタンフォード大学の学長が、以前、毎年コロコロと大学ランキングが変わるのはおかしいとまともな批判をしていたのを思い出します。学術研究は長期的視座に立って行われるものだし、大学改革も長期的に行われるもの。教育機関としての優劣は、そんなに毎年大きく変動するものではない、というまともな批判を展開し、加熱する大学ランキングに苦言を呈しています。

ランキング情報を見る側も、世の中にあるランキングで、誰が得をしているのか?を考えてみる必要があります。

結局、ランキングを発表している出版社や機関が、「いかにランキングをあげるか」といったコンサルテーション・ビジネスを大学に提供するためのツールとしてランキングを発表していたりするので、所詮はビジネスのためにランキングを発表しているという事実を見逃してはいけません。だから、毎年ランキングをコロコロ変えていかないと、彼らにとってはビジネスにならないのです。


* * *


もしアメリカなど海外への留学を計画している人は、次のように自分の「足」で稼いで調べることが大切です。


  • キャンパス・ツアーをして大学を訪問(都市型、郊外型、その土地の文化・国際性)
  • オープンキャンパスに参加
  • 卒業生・在校生と話をして大学・学部の雰囲気をつかむ
  • 教育カリキュラム(自分が学びたい分野に強いか)
  • 卒業率(退学率)や卒業後3ヶ月以内の就職率
  • 卒業生の進路
  • 卒業生の平均初任給
  • 卒業生ネットワークの厚み
  • 学費(留学生向けの奨学金やフィナンシャルエイド等の制度の充実度)
  • 生活費(都市部は田舎に比べて当然高くなります)
  • 学生の構成比(留学生の比率や人種の比率、日本人学生数等)
  • キャンパス周辺での犯罪発生率(例えばコロンビア大学、シカゴ大学、南カリフォルニア大学は犯罪発生率が非常に高い地域にあることで有名)
  • 気候(アメリカ大陸は気候も様々。冬は極寒・豪雪のニューイングランド地域があるかと思えば、ヤシの木が生える亜熱帯のフロリダ、地中海性気候のカリフォルニアの海岸沿い、砂漠地域のアリゾナ、灼熱のテキサス、雨の多いシアトルなどの北西海岸部などなど多様です)



留学を後悔ないものにするためには、自分の目で見て確かめる必要があります。ランキングだけで決めるのは得策ではありません。




(Photo via UC Berkeley)

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