意外と知らない「But(でも)」のニュアンス

前回が超難関な単語だったので、今回は超簡単な単語をテーマに選んでみよう。それは誰でも知っている接続詞の「But(でも、しかし)」だ。英語を学び始めた人にとって、かなり初期に習うことになるであろうButは、英会話でとても重要な上に、短く発音も簡単だ。そのため多くの人が使っているだろうが、まさか自分の使い方に問題があるとは思っていない。

中学・高校の英語教育でどの先生も教えてくれなかったのは、英語で文章を書く時、「But」が幼稚な言葉になりうるということだ。日本の大学で英語のコンポジション(文章を書く)授業を受けた時、英語がネイティブの教師からまず指摘されたのは、「新たな文章をButで始めてはいけない(なるべく避けるべきである)」ということだ。Butで文章を始めるのは子供がすることだという。もし論理の展開上、「しかし〜」と新たに文章を始めたい場合、「However」や「Though」「Yet」などの別の「しかし〜」や「〜だが」を意味する接続詞を使うようにとアドバイスを受けた。

もちろん、ネイティブの人が書く文章でも、Butで始まる文を見かけることはある。しかしそれは何かを特に強く強調したい時であったり、幼稚には聞こえない文章の流れがすでに作られていて、ネイティブではない人が簡単にできるワザではない。そのため、論文、ビジネス文書、願書、入学エッセーなど真面目な文章を英語で書く場合、新たに「しかし〜」と文章を始めたい場合は、「But〜」ではなく「However, 〜」とした方が無難だ。

もちろん、2つの文章をButでつなげ1文にしたり、"I like A but not B."というように文章の中で'but'を使うのは真面目な文章でも問題ない。あくまで、文章の頭にButを書くのはなるべく避けようということだ。

それでは、話し言葉でButを使いたい時は何に気をつければ良いだろうか?会話の中で使う場合、文章を書く時ほど、頭出しをButで始めると幼稚に聞こえるということはない。もちろん、真面目なスピーチやインタビューを受けるとき、会話の中でもButより堅いHoweveが好んで使われる傾向がある。

それよりも注意すべきなのは、誰かと会話をするとき、相手の発言を受けて「But〜」で始めると、敵対していると思われて、相手をイラっとさせる可能性があるということだ。日本語でも同じだと思うのだが、例えばAさんが「私はネコが好きなんだよね」と言って、Bさんが「でもネコはイヌみたいに人に懐かないでしょ」と言うと相手を否定して会話が終わってしまう。

しかも、人によっては、会話のキャッチボールのなかで、無意識に「But〜」で受け答えを繰り返す人がいる。会社の新しいアイディアを出し合う会議などで、誰かが提案した内容に対して「でも〜」と否定的な意見をぶつけることは、一見、建設的な意見を出して議論に貢献しているように見えるが、実はその場の雰囲気を悪くして新しいアイディアを気兼ねなく出し合うという目的を壊してしまっている。注意して聞いていると、会社の打ち合わせなどで意外と「But〜」ばかり使う人がいる。

さらにたちが悪いのは、相手が言っていることを肯定しつつ、「そうなんだけど、でも〜」と結局は否定する言い方。英語でも"Yes, but...."と言ってしまう人は多い。相手が正論を言っているのに自分の意見を通したい人がこういう言い方をよくする。これは会議などに限らず、家族や恋人同士の間でもよく聞かれるフレーズ。


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「But〜」は使いやすいし、自分の意見は(他と違って)こうだと言いたい時に簡単にそれを伝えることができる接続詞なのは間違いない。しかし、使うのが簡単すぎるが故に、使い過ぎてしまったり、簡単に相手をイラつかせてしまうということを忘れてはいけない。

「But〜」と言い過ぎて他人をイラつかせないために、英語で会話する時に、「But」の代わりに「And」を使うよう心がけてみよう。先の例でいうと、「I like cats(私はネコが好きなんだよね)」と言う人に対して、「Yes, but cats are not as friendly as dogs(そうだけど、でもネコはイヌみたいに人に懐かないでしょ)」ではなく、「Yes, and I like dogs(そうだね。そして私はイヌが好き)」と言うと、相手と違う意見でも、角を立てずにスムーズに返すことができる。



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