絶妙な英語訳 ー「トキメキ」を"spark joy"と訳した近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』


今アメリカで一番話題の日本人は、紛れもなく近藤麻理恵さんだろう。片付けの指南書『人生がときめく片づけの魔法』で一躍人気になり、さらにそれがネットフリックスの番組"Tidying Up with Marie Kondo"(マリエ・コンドーと一緒に整理整頓)になって全米のみならず世界に配信されている。

彼女の整理術を一言で言い表すと「トキメキ」だ。本のタイトルも「人生がときめく〜」とあるように、トキメキを感じる気持ちを大切にして物を整理するのが彼女の整理整頓の哲学。それが、アメリカ人が東洋文化に対して抱いている神秘主義とあいまって、アメリカ人の間で(ヨガブームの時のように)瞬く間に人気が広がったのだろう。

彼女の書籍「人生がときめく片づけの魔法」でも、「トキメキ」という単語が多用されている。その英語版で、「トキメキ」は"Spark joy"と訳されている。英語の翻訳版を読んだアメリカ人の知人から、「Spark joyって日本語の原書ではなんと言っているの?」と質問された。彼女は日本語を多少学んだことがあるため、日本語でどう言うのか知りたかったようだ。

「喜び・期待などで胸がどきどきする」という意味の「トキメク」の語源は、「不詳であるが「動悸」 + 接尾辞「めく」か」とある。確かにドキドキ感が「トキメキ」の中にあるように感じられる。特に一目惚れのシーンなどでトキメキを感じると言うのは、そのドキドキした鼓動が由来しているのかもしれない。

その「ドキドキ感」を、彼女の書籍の英語版では「spark(火花)」と「joy(喜び)」をつなげた表現で翻訳している。英語版の書籍のタイトルも、ズバリ"Spary Joy"だ。イメージとしては、火花が一瞬バチっと散る、そんな瞬間的な弾け飛ぶ喜びという感覚だろうか。

「トキメキ」を表現する英語には色々あり、形容詞だとthrobbing(喜びなどで心臓がドキドキする)、動詞だとresonate(心の中に響きわたる)や、touch a chord(人の琴線に触れる)というような言い方もできる。

アメリカで日常生活を送っていると、

That movie resonates with the young generation(その映画は若者世代の心を掴んだ)

というような言い方でよく耳にする表現だ。throbbingも比較的よく耳にするし、touch a chordもよく使われる言い方。しかし、こうした使い古された表現がある一方で、spark joyは目新しさがあり、しかも彼女の言いたい「トキメキ」という感覚をうまく英語で表現している。まさに言い得て妙、絶妙な翻訳だろう。

近藤麻理恵さん、通称コンマリさんのアメリカでの成功は、このキーワードの絶妙な翻訳のおかげと言っても過言ではないかもしれない。

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