誰でも知っているGo(行く)の微妙なニュアンス

全米チェーンのドラッグストアCVSで、"grab & go"(グラブ・アンド・ゴー)という棚がレジ隣にできていた。これまであまり見かけたことがないこの商品棚に興味津々。ナッツ類やクッキー、クラッカーなどのスナックが多く陳列されている。

これは急いでいる客のために、広い店内でお目当ての商品を探す手間を短縮するために設けられた商品棚のようだ。

"grab"は「つかむ・鷲づかみにする」という意味。文字通り訳すと、"grab & go"は「つかんでゴー」。運動会の「借り物競走」で紙に書かれたアイテムを、まさに「つかんでゴー」するというイメージだ。日本語に訳すと、「お急ぎの方向け」商品棚といったところ。

アメリカは店舗がやけに広いということもあり、面倒なこと(そして歩くこと)が大嫌いなアメリカ人のニーズにこたえるためにできた商品棚のようだ。さすがコンビニとドライブ・スルーが生まれた国アメリカ。面倒くさがりな消費者が欲しいようなスナック類の専用棚を、レジ横に作ってしまったわけだ。

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"〜 and go"という表現は、grab and go以外にもたくさんある。

"Kiss and go"は特に有名だ。学校の正門近辺は、子供たちを送り届ける親たちの車でいつも渋滞する。しかも愛情表現が豊かなお国柄のため、必ず親が子供にキスをするのが通例だ。すると自然と交通渋滞は悪化の一途をたどる。

そこで朝の交通渋滞を少しでも緩和するため、車の流れを妨げないような場所に"Kiss & go"専用のレーンが作られていたりする。しかも親(運転手)が車から出ることは許されず、学校に行ってくる子供に車の中から(2分以内に)「キスしてゴー」というルールのところもあるようだ。

Photo courtesy: www.bankstownw-p.schools.nsw.edu.au/news/kiss-and-go-zone-for-bwps?pparam&old

配送だけではなく印刷サービスも提供するFedEx Officeだと、短時間で印刷できるセルフ・サービスを"Print & Go"と呼んでいる。

人気の旅行ブロガーのサイトは"Shut up and Go"(つべこべ言わずさっさと出発しろ)だし、とある旅行代理店も"Pack up + Go"(荷物を詰めて即出発)という名前だ。

そのほかにも、Order & Go(ドライブスルーなど持ち帰り専用レジ)や、Touch & Go、Photo & Go、Lock low & Go、Give & goのように組み合わせは無限だ。

"Go"には、単に「行く」という意味だけではなく、使い方によっては急いでいる様子も生じてくる。しかも、単に急ぐだけではなく、滞りなくスムーズに作業が終わり安心して立ち去るというニュアンスも含まれる。そのため、早くて信頼できるサービスを謳うものに、"Grab & go"といった"〜 & go"の表現が使われることが多い。

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アメリカでは「お持ち帰り」のことを"to go"と言う。お店で「持ち帰りでお願いします」とお願いしたいときは、"To go, please"だ。店内で食べる余裕がなく急いでいるというニュアンスがこの"go"にもある。

ちなみに、イギリスやオーストラリアは「お持ち帰り」のことを"take away"と言う。やはり"go"を使わないぶん、アメリカ人よりも急いでいる様子が薄い気がする。



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